沖縄映像文化研究所 
~LICO通信 最新記事~

 
4月30日、京都大学 こころの未来研究センターの鎌田東二先生が沖縄に見えて、本島南部・北部の聖地をともに巡りました。
 
ヤンバルでのことを、鎌田先生が文章にまとめておられます。
「これはぜひ皆さんにもご一読いただきたい」という大重監督のたっての希望で、鎌田先生より許可をいただきましたので、掲載いたします。
 
>> 東山修験道69 ヤンバルと天の川を往く
 

この文章は、「モノ学・感覚価値研究会」のウェブサイトの、「研究問答」で掲載されているものです。

 
また、去る2009年11月末に立教大学で開催された「比較文明学会 第27回大会」(大会実行委員長:阿部珠理立教大学教授)にて上映された『久高オデッセイ 第一部』、シンポジウム「収奪文明から還流文明へ-久高島から世界を見る」の報告文を鎌田先生がまとめておられます。こちらもあわせて掲載いたします。
 
>> 比較文明学会第27回大会パネル報告
 

 

 

3月21日(日)・22日(月)と、鎌倉・長谷にて、『久高オデッセイ』『久高オデッセイ 生章』『水の心』の上映会が開催されました。
先住民族のクラフトショップ Middles」様のイベントでした。
当日は大重監督も出席し、皆さんと大いに楽しい時間を共有することができました。
当日の様子は、Middles 店長日記にて詳しく紹介されていますので、ぜひご覧下さい。
(LICO写真館にも写真を載せてあります)

『久高オデッセイ第二部「生章」』上映会+楽しい世直しシンポジウム

大重潤一郎氏
大重潤一郎氏
島薗進氏
島薗進氏
阿部珠理氏
阿部珠理氏
鎌田東二氏
鎌田東二氏
佐藤壮広氏
佐藤壮広氏
井村君江氏
井村君江氏

 2009年3月7日(土)は、東京自由大学が東京大学を占拠した記念すべき日となった。と書けば、革命かクーデターでも起こったような雰囲気であるが、具体的にいえば、設立満10年を迎えた東京自由大学が(ここ4年余りはNPO法人東京自由大学)東京大学理学部の小柴ホールを借りて、「NPO法人東京自由大学設立10周年記念特別行事~『久高オデッセイ第二部「生章」』上映会+楽しい世直しシンポジウム~」を行ったのである。朝の10時から夕方の6時半まで3部構成で東大本郷キャンパス内に、「東京自由大学デー&エリア」を実現したのだ。
 東京大学が東京自由大学化する! これは、すごいことではないか!
 まずそのPart1は、「大重潤一郎映画アワー」。大重潤一郎監督の映画『水の心』(1991年製作)と『久高オデッセイ 結章(ゆいしょう、第一部)』(2006年製作)。『水の心』はヒマラヤや山々から流れ落ちる水がどのような旅路を辿って人々の生活の場に届いているかを詩情豊かに描いた大重さんらしい、小品だが、大変格調ともののあはれとエロティシズムに充ちた名作で、わたしはこの作品が大好きである。今回初めて多くの人に見てもらったことになるが、これからも定期的に大重作品を東京自由大学で上映していければいいなと思っている。
 次に、本命のPart2。これは、『久高オデッセイ 生章(せいしょう、第二部)』上映会とトークセッションである。スピーカーは、東京大学教授で宗教学者の島薗進さん、立教大学教授でアメリカ先住民研究者の阿部珠理さん、そして大重潤一郎監督。そこに、コメンテーターとして、立教大学講師で沖縄宗教文化研究者の佐藤壮広さんが加わった。
 阿部さんは、子供とおばあのシーンが印象に残ったことや、それが大重監督自身の再生と重ね合わされていること、また、アメリカ先住民のラコタ・スー族の直面している問題との比較の観点から明晰に『久高オデッセイ 生章』を語った。島薗さんは、修士論文に折口信夫を取り上げ、柳田國男や折口信夫に始まる民俗学にとって沖縄や久高島がどれほど重要な土地であったかを指摘し、「沖縄の力とは何だろう?」と問いかけた。佐藤さんは、海人(ウミンチュ)と子どもたちが一緒に網の綻びを縫っている姿に今の久高島の象徴的な姿を見て取り、島の痛みと自分の痛みを重ねて映画を完成させた大重監督の今日性を浮き彫りにした。
 そして、当の大重さんは、脳出血に倒れ、電動車椅子に乗って島々を回りながらカメラを回し続けた自分が「見ていた光景」は何よりも「夜明け」だったことを切々と訴えた。真っ暗な闇から青みが差し、やがてそこに赤みが混じってくる。この夜明けの光景が、繰り返し描き出されるのも『久高オデッセイ 生章』の大きな特徴だが、その背景と根っこを赤裸々に語り、強い印象と感動を聴衆に与えた。

上田紀行氏
上田紀行氏
海野和三郎氏
海野和三郎氏



 最後のPart3は、「楽しい世直しシンポジウム」。これは、すべて、NPO法人東京自由大学の関係者で固め、“楽しい世直しのための発想と実践、アートとスピリットの覚醒のネットワーク”をそれぞれの立場から語ってもらった。パネリストとして、妖精研究家ででケルト学研究家の井村君江妖精ミュージアム名誉館長が「妖精力と世直し」を、東京大学名誉教授の天文学者の海野和三郎NPO法人東京自由大学学長が「地球環境と世直し」を、東京工業大学准教授で文化人類学者の上田紀行さんが「仏教再生と世直し」を、それぞれの経験と論点で語った。また、チャンプルーズのリーダーの音楽家で参議院議員の喜納昌吉さんがビデオレターで「生命ルネッサンス・地球ルネッサンス」の力強いメッセージを届けてくれた。

 とにもかくにも、8時間半に及ぶこのNPO法人東京自由大学10周年記念特別行事は、立ち見(実際には座り見)も出るほどの盛況の中、時間不足でスピーカーの方々には十分な発言をしていただけず、またフロアーの皆さんの発言も拾うことができないという“時間との闘争”の中で苦闘を繰り広げたが、大変充実した有意義な時間と空間を創出し共有することができたと本当に有難く思う。関係各位に心からの感謝を捧げるとともに、今後の東京自由大学の使命を力強く、地道に果たしていきたいと改めて心に誓った次第である。
 最後に、NHKの「人体」シリーズのディレクターで、現在NHKエンタープライズ情報文化番組を制作している高尾正克さんが、「大重監督が大変困難な状況の中で、あのような作品の完成にこぎつけられたのは、まさに奇跡的なことだと思います。本当におめでとうございました! まず、「私は見た…」でガツンとやられました。単なる表面的な演出ではなく、深い内実を伴った迫力を感じました。そして第二部では、自然の美しさが印象に残りました。(中略)大きな自然に抱かれたものとして人々の営みがたちあらわれる。さらに、表層より一歩深い時間の流れが、非常によくとらえられているように感じました。それは、直接的な言語より、気配など、非言語的な要素に耳を傾けた結果かと思います。とにかく大重さんらしさが、にじみ出た作品になったなあ、と強く感じました」と感想をメールで送ってくれ、第3部への期待を寄せてくださった。本当に心の底から嬉しさの湧いてくる感想メールであった。ありがとうございました! (鎌田東二記)

NPO法人東京自由大学ニュースレター Vol.12 より

命の時代 文化の根っこを伝えたい

 人間は本来、どういう存在なのか--。映画を通して、人類の普遍を問い続けて40年。沖縄の島に、その答えを見つけた。

 琉球の始祖が降臨した「神の島」と呼ばれる久高島。12年に1度行われてきた祭事「イザイホー」が1978年を最後に途絶え、伝統文化は崩壊の危機にあった。

 だが、島民たちは自然の恵みに感謝し、天、海、地に祈りをささげる暮らしを続けていた。
「生命を慈しむ土着信仰は、地下水脈のようにしっかりと息づいている」。2002年に神戸市の自宅を離れて島に移り住み、12年がかりで三部作の記録映画の撮影を始めた。

 映画はナレーションのみ。カメラはただひたすら、大自然に育まれた島民の暮らしを追う。

「私たちの社会は、効率優先から、命の時代に入った。人々が太古から受け継いできた文化の根っこを伝えたい」。思いはただそれだけだ。

 04年10月、脳出血で倒れた。右半身まひ。撮影は中断を余儀なくされた。なえそうになる気持ちを奮い立たせてくれたのは、島で見た「夜明け」だった。真っ暗な闇に次第に赤みが差していく光景が、再起を図ろうとする自身と重なった。「自然に生かされている」。そう実感した。

 夜明けシーンから始まる第2部「生章」は、東京大で上映され、民俗学や宗教学の識者が埋めるホールで喝采を浴びた。これから第3部の撮影に入る。

 カメラを手に、車いすで島を回りながら思う。「島に見るべきものは何もないが、どう生きるべきかを示すすべてがある」

 文・鬼束信安 写真・田中勝美
(読売新聞 2009年6月26日夕刊)

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